和音の中までいじれる音楽編集ソフト
It’s like Photoshop for music.
これはすごい。ドイツで開発されているDirect Note Accessという音楽編集ソフトなのだが、なんと和音の中のそれぞれの音まで触れてしまうそうだ。
かなり衝撃的なデモ動画があるので、とにかくまずはご覧あれ。
1:10 - 従来のコード操作。コード全体のピッチが上下する。
1:55 - コードがそれぞれの構成音に分解できる。
ここからはもう見てのとおり、ミラクルが展開される。
Youtubeではよくわからないが、音をいじってもほとんど音質が劣化しないらしい。実際のところはどうなんだろうか。たとえばPhotoshopでもカラーバランスを変えたり彩度を上げたりしていると簡単にトーンジャンプを起こすが、きっと同じような劣化は避けられないはずだ。何らかの形で飛んだ情報をうまく補完したりする技術も入ってるんだろうな。
これを導入すればコマーシャリズムいっぱいのJ-Popレーベルはレコーディングコストが下がって万々歳だろう。なにせ歌が下手でも楽器が下手でも採り直しの必要がないのだ。一人のミスのために10人の時間が奪われることがなくなる。効率が上がって時間的・人的コストは下がり、同じ時間とカネでできるレコーディングの数が増える。
それは一体どういうことを意味するのか。他でもない、こういった技術の登場は、CDは良くてもライブを聞くと萎え死ぬような中途半端アーティストがまだまだ増えることを保証してくれるのだ。さらに言えば、編集ソフトがHi-Fiになればなるほど我々の耳は厳しく試される。「そんなん本当の音楽じゃないやろ」なんて言っててもあなたの聞いてるマイルスは調整済みかもしれない。世界の未来は明るい。
というのはさておき、これが活用できるのはきっとそんな残念な場面だけじゃない。リミックス、マッシュアップ関連でいろいろと面白いプロジェクトが増えそうだし、たぶん映画やテレビ番組などの音声トラックを編集するのにも使えそうな気がする。いや、業界を全く以って知らないから当て推量でしかないが、少なくとも素人メディアでは活躍すること間違いなしだろうと思うし、それはそれで今の世の中では大きな意味を持つはずだ。
リリース直後は祭りになるだろうから、どんな作品が出てくるかちょっと楽しみだ。
量子力学の奇妙なところについての読書メモ(3)
本当のパラドックス
EPR実験やその周辺について思考を巡らせるとき、我々は実在について悩まなければいけない。だがロケットを飛ばしたりタンパク質の折りたたみを調べたりしているときは、そんな必要はない。ならば、微細な部分では曖昧で不可解な性質を持つものが、なぜ巨視的には堅固で確実なように見えるのか。
また、量子の性質が不確定だというのならば、それを観測する機械自体が不確定で曖昧な結果を出さないと、どうして言いきれるのか。
脱コヒーレンス
この問題を説明するため、まずは例の猫が生きているか死んでいるかを考える。生きた猫を表す粒子の配列はたくさんあり、死んだ猫を表す粒子の配列もおそらく同じくらいたくさんある。しかもそれらはその中で常にうごめいている。すると、猫が生きているとか死んでいるとかを、ひとつの巨視的量子状態として捉えていいのかは疑問だ。
結論から言うと、猫の箱につながれたシュテルン・ゲルラハ磁石を電子が通過した瞬間、たしかに猫は半分死んで、半分生きている。電子が半分上向きで半分下向きと言うのとまったく同じ意味で、つまり重ね合わせとして、だ。だが大量の粒子の集まりとしての猫は常に微妙に変化している。このとき、死んでいる側と生きている側が両方ランダムに生きた状態と死んだ状態へと変化していく。この無数の生きた猫と死んだ猫の重ね合わせにより、波動関数が互いに打ち消し合うのだ。従って巨視的には、確率的に生きているか死んでいるかどちらかへ変化することになる。
要するに電子が観測されたその一瞬だけは猫も重ね合わせの状態にあるが、一瞬後には、おなじみの「生きているか死んでいるか知らない」というごく普通な状態になるわけだ。
これを、量子の集合体が協調的にではなく分散的に動くという意味で脱コヒーレンスとよぶ。
コヒーレンスが復活したら
脱コヒーレンスは、それぞれの粒子がほぼランダムに動くため、コヒーレンスを維持するのに比べて圧倒的に確率が有利なためおこる。これは、たとえばタバコの煙を吐き出したとき、それがまっすぐ上に昇らず広がっていくのと似ている。原理的には、まっすぐ昇ることは可能だ。ただ確率が極めて低いというだけの話である。白いピン球10000個の中に3個のオレンジ色のピン球を入れ、その容器を振っているうちに三個が集まってくるか、というのとも似ている。原理的には可能だが現実的には起こり得ない。
つまり、時間が経てば猫は再び半死半生の重ね合わせになりうる。だが現実的には起こりえず、起こったとしても誰も気がつかないほど早くコヒーレンシは再び失われ、その性質は消える。
月がきっと存在するのも、観測機が正しく電子のスピンを観測できるのも、同じ理由による。天文学的に小さい確率で、月が一瞬裏返るかもしれないし、計りの針が二ヶ所を同時に指すかもしれない。だがそれは巨視的なモノに関しては現実的には起こり得ないから、心配する必要が無いのだ。
感想
一応、これで全部です。あまりうまくまとまっていないのは、あまりちゃんと理解していないため。たぶんこの本が特に難解だという訳ではないと思うが、概念自体が僕にとっては新しすぎて、馴染むのに時間のかかっている。なにせ、対応する現実のメタファが見当たらない。他の分野の科学というのはだいたいにおいて現実世界にメタファがあり、それを活用することで理解を進めることができているんだというのは、この本を読んで得た副作用的な気づきだ。
この本のタイトルはかなりいいところを突いてると思う。序盤・中盤で量子力学の奇妙なところをこれでもかというほど突きつけておいて、終盤ではその奇妙さが八割がた無くなるように展開する。ただ、完全になくなる訳ではない。だから「思ったほど奇妙でない」というのは言い得て妙だ。
英語の長い分がそのまま訳されていたりと和訳にちょっと難があるが、全体的には、かなり頭の体操になったので満足だ。
しかし結局もやもやが残る…。これを消そうと思うといずれかの流派(と言うよりむしろ宗派)を踏襲するしかないんだろうか。
量子力学の奇妙なところについての読書メモ(2)
前回の続きです。
コペンハーゲン解釈 vs EPR
測定していない事象はあくまで不定であり、それを考えることには意味が無いとするのがコペンハーゲン的解釈。それに対し、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンは通称EPR呼ばれる思考実験を提唱し、反証しようとした。
EPR実験では、正反対の方向へ飛び出す一対の粒子を考える。すると一方の粒子について位置や運動量などを測定することで、もう一方の粒子に関しては何の影響も与えること無く情報を得られることになる。つまり測定と独立した絶対的な現実が存在するはずだという主張だ。だがコペンハーゲン派代表のボーアはそうではないと言った。
ジレンマの誕生だ。アインシュタイン説を取るとある定まった現実が存在することになり、ボーア説を取ると何らかの方法で瞬間的に情報が伝達されていることになる。両方、あまり好ましくない。
ボームの「隠れた変数」説
ボームは、測定している事物には、我々の知らない秘密の「隠された」特性があるのではないかと言った。例えば二重スリット実験で言うと、光は実際に粒子であり、どちらか片方のスリットを通る。その際、光子はガイドウェーブというものに導かれる。その上で光子の初期状態に微妙なばらつきがあるため、結果として干渉模様が生まれるという。
だがこの説はあまり広く受け入れられなかった。まず、ガイドウェーブが光子に道筋を教える方法を説明するために量子ポテンシャルと言う不可解な新しい概念が必要であること。次に、光子は力の作用を受けないのにどうやって道筋を変えるのかが上手く説明されないこと。さらに、ガイドウェーブは必然的に非局所的であり、装置のあらゆる部分からの必要な情報を持っていなければいけないこと。
ベルの定理
ベルは同時に二つのEPR実験を行った際のそれぞれの粒子の状態を変数としたある代数式を掲げた。もし隠れた変数によって情報が瞬間的に伝達されるのなら、その式は-2〜+2の値を取るはずだった。しかし実験的には、最大で2√2までの値を取りうることが分かり(アスペが行ったこの実験はこの本で解説するには難しすぎるらしい)、かくして隠れた変数説は失脚した。コペンハーゲン解釈は妥当性を保ったわけだ。
残された可能性
隠れた変数による潜在的な現実という説が倒れたいま、残された考え方は三つに分けられる。
・ボーアが正しく、観測するまでは不定なのかもしれない
・瞬間的に伝わる影響力があるのかもしれない
・観測機同士が互いに影響を及ぼしているのかもしれない。
ただし後者ふたつは、分からない部分を別の分からない部分へと押しやっただけ。一方コペンハーゲン解釈は据わりが悪いが理論としては簡潔だ。
続きます。
ところで、このブログをRSSリーダーで見るとまったく改行されずに表示されていたようですが、修正しました。少なくともGoogle Readerでは正しく表示されるはず。
カブロボグリッドがとりあえず(半分)動いた
カブロボグリッドをとりあえず動かしてみた。
昨日まとめたBOINCの仕様の実感を何となくつかめた気がする。
今はこの研究室マシンでカブロボクライアントが走っているが、なにやら気に食わんらしい。Project Communication Failed?? うむぅ。なぜ?もしかして仕事がないんだろうか。ワークユニット生成はした覚えがない。どこでどういう風に行うものなのかはまだ理解していない。
BOINCのドキュメント首っ引きで進めているが、この順番で読めば間違いない、という風には書かれていないので必要な情報だけスキャンしようとするとやや難しい。片っ端から読まなければいけないかもしれない。
これからすること:
- ワークユニットとリザルト生成にまつわるBOINCの仕様を理解する
- カブロボグリッドにおけるワークユニットの構成方法を理解する
- クライアントによる出力がどこにどう記録されているのかを理解する
- ライアンが残したユーティリティスクリプトを読んで理解する
研究室にあるグリッド関連の書籍がかなり貧弱なので図書館に行ってみたが、やはりあまりエキサイティングな文献は見つからなかった。ついでに言えば 工学 部の文献室にも初めて行ってみたのだが、こちらもDoors検索すると状態が「研究室」の物ばかりで、結局余りよい書籍や文献は手に入らずじまいである。 まぁ今はまだ自分のやるべきことがハッキリしていないから論文を読んでも仕方がない(というよりも論文の探しようがない)のだが。
適 当に検索してみるとスケジューリングやらなにやらで色々と分散・並列コンピューティングに関する資料はヒットするのだが、そのうちどこまでの面倒を BOINCが見てくれているのかは知っておく必要がある。さすがに二週間でBOINC自体に手をつけるのは難しい。自分が触るべきところをハッキリさせる のが今週の目標か。